コミュニケーションの場を作り、
 地域や人を育てる。市民の祭り、博多山笠

博多祇園山笠振興会 会長
後藤 久義 氏

760年を超える歴史を持ち、博多っ子たちに愛され続けている「博多山笠」。全流のつなぎ役、まとめ役としての博多祇園山笠振興会は、昨年50周年を迎えた。その会長として、流の主体性を重んじながらも秩序と統制をとり、発展に力を尽くしている。山のぼせとしての熱い思いと会長としての今後の山笠への思いを語ってもらった。

昭和7年、福岡市博多区生まれ。奈良屋町(西流)に在住。町内では取締などの役員を歴任。平成13年に7代目の会長に就任。本業は「三興バルブ継手株式会社」専務取締役
   
神 代

博多祇園山笠振興会が昨年創立50周年を迎えられたとのことですが、これだけ山笠が全国的に有名になってきますと、いろいろと見直さなければならないことも多くなると思います。そういった時に、今までのしきたりや伝統とのせめぎあいみたいなものが出てくると思うのですが、お考えをお聞かせ下さい。

後 藤

私はそういう壁というのはある面で壊していかなければならないと思います。時代とともに山笠もいろいろな形で進化していく。そういう方向をたどらないと、いつかもっと大きな壁にぶつかります。例えば、今までも「那珂川を越えて福岡部(天神)に山笠を持っていくのはどうか?」とか、「不浄のもの立ち入るべからず」の立て看板の問題もありました。伝統を守りながらも、そういった一つ一つを皆で考え、解決して行きながら時代に即し、振興会創立51年から100年目に向かうような形を作って、充実した一歩を踏み出したいと思っています。

神 代

山笠の期間中、財政面でも大変なのではないですか?

後 藤

博多だからこそやってこられているのだと思います。それぞれの流れに「自治の精神」があります。町内が11〜12集まって一つの流れを作っているのですが、各町で150万円使ったとしても1、800万円くらいが必要です。それを自分たちで寄付を募るなどして作っていきます。祭りというのは大きな消費です。消費力を促していかなければなりません。浪費しているわけでなく、祭りによって大きな消費が動いていく。どれだけの経済効果があるかということで、調べました。昭和63年に、日経が出した「祭り」について書いている経済考を見ましたら、山笠が直方の予算に匹敵する204億円の波及効果、経済効果を生んでいるというのがわかりました。

神 代

それは、すごいですね。現在はもっと大きくなっているでしょう。

後 藤

その当時もそんなにあるものかと私も思いましたが、新聞社が細かく出していました。それから、10数年経っていますから、市の統計課で今の経済効果を出してもらいましたら、309億円でした。経済効果がそれだけあるというのは、流通につながっているということです。

神 代

祭りの効果というのはすごいですね。

後 藤

そうです。その祭りを支え、継続していくのに、一番大切なのは地域に根ざした人との「コミュニケーションの場」つくりです。ですから、山笠には飲みごと、直会がついているのです(笑)。この効果があったからこそ、継続してきたのだと思います。

神 代

私ども、中経協の活動は「場づくり」、「人づくり」、「地域づくり」を柱にしています。お話しを伺って山笠とまったく同じで確信がもてました。760年続いた山笠と同じですから、自信を持って事業活動をやっていきたいと思います。

教育が凝縮された山笠
神 代

山笠は、地域が一体となっているという感じを受けるのですが、子ども達の教育という面において、どのような影響を与えていますか?

後 藤

私は、山笠は教育が凝縮された最たるものだと思っています。山笠では「長幼の序」を重んじて、年上の人は絶対なのです。目上の人を敬い、礼儀正しさを学んでいく。大人の背中を見て子どもが育つから、大人も背筋をのばし悪いことはできない。そのおじさんたちが口やかましく指導するわけです。ですから、非行はありません。山笠が終わっても、地域の中で変わらずに気軽に声をかけ育てていくという風土があります。我々もより広く山笠を理解してもらおうと、地域の学校関係者や女性協議会の代表者などと懇談会をします。勉強と山笠の両立をさせていきたい。なんとしても地域の中で育てていきたい。教育関係の方々にも一緒に祭りを味わってもらい、理解していただいています。

神 代

山笠の体験ができる地域の学校は恵まれていますね。そういう場がある学校とそうでない学校とでは違いが出てきますね。

後 藤

そうだと思います。この体験は、子ども達の心に根ざし、今後の人生にも少なからず影響を与えると思います。地域外のほとんどの子が中学になると勉強や部活動があり離れていきます。しかし、そういう子にも来られる時間を作り、土日には来なさいと言っています。いつも子ども達を受け入れる門は開いていたいと思います。

伝統と進化を楽しむ
神 代

会長さんが振興会に関わりを持たれたのはいつ頃からですか?

後 藤

昭和53年ですから、46歳くらいからです。27年間山笠につかりこんでやっています。外部から見てわからないかもしれませんが、熱い心で楽しんでやっています。山笠のこれからの発展につながるためには、自信を持って楽しくやらなければいけません。

神 代

764年続いている山笠が、今なお愛され発展し続けている魅力は何ですか?

後 藤

山笠に対する皆の情熱じゃないでしょうか。法被を着ると心がうずくんですね(笑)。嬉しいのです。日本一の祭りと自負している以上、外部からの評価ももらうし、誰がみても博多はすばらしいといわれる山笠を作らなければなりません。マナーアップもしました。より徹底して、評価してもらえるようにしています。そのような中で、博多の男だけの祭りから、市民の祭りになってきたと思います。地道にやってきたことの積み重ねです。それが一人ひとりに浸透してきています。伝統を守りながら、変えていくところは変えていく。進化していくのです。

神 代

本日は大変お忙しいところ、ありがとうございました。同じ「場づくり」、「人づくり」、「地域づくり」を目指す団体として、大変勉強になりました。博多祇園山笠振興会の益々のご発展を心から祈念いたしております。


<聞き手 左>
社団法人福岡県中小企業経営者協会
(福岡建物株式会社 代表取締役社長)

副会長 神代 昌幸 氏

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