国際的な視野の中で、
真の安全と安心を届ける自衛隊へ。

防衛庁長官  大野 功統 氏

戦後60年、今までタブー視されていた憲法が改正の方向に進み、教育においても、外交においても日本の独立国家としての根幹に関わることがすべて、新たな見直しを求められている。この大変な時期に防衛庁長官として活躍される大野 功統氏に、領土問題、自衛隊の課題やあるべき姿について語ってもらった。

昭和10年10月香川県生まれ 高松一高を経て東京大学法学部卒大蔵省へ。昭和61年衆議院議員初当選。自由民主党 平成16年防衛庁長官就任 好きな言葉「捨我」「いすによって仕事をするな」
   
利便性を求めて都心回帰が始まった
小早川

日本の防衛と外交は、今非常に大変な時期にきています。まずロシアとの北方領土、中国との尖閣諸島、最近では、韓国との竹島の問題など、いわゆる領土の問題が象徴的であると思っています。いかがですか?

大 野

まず、ロシアとの北方領土の問題ですが、これは、お互いの信頼関係を築きあげたうえで解決していくのがいいと思います。ロシアは今、ガスパイプラインをひいてこようという大きなプロジェクトがありますから、そのような問題も頭に入れて、全体像の中で解決していくべきだと思います。

小早川

ロシアにはロシアの国益があるでしょうし、私達は歴史に見て、当然、北方領土は日本に帰属するのだという意識があります。お互い言い分がありますね。

大 野

そうです。経済あり、政治あり、北方領土あり、その中で一つ一つの信頼関係が大切なのです。先日、プリマコフ氏に会って話をしましたが、私は信頼関係を更に築いていけばこの問題は解決がつくと思います。

小早川

「急がば回れ」ということも時には必要ですか?

大 野

尖閣諸島の問題は、日本の領土ということで確立しているわけですから、解決ずみです。但し、中国の理解を根気良く求めていくべきです。難しいのは竹島です。韓国は一番大切な隣人です。ですから、いきなり竹島から出発して領土問題という関係ではなく、まずは国同志の話し合いからやっていくべきだと思います。すべて、「急がば回れ」です。

小早川

頭痛の種である北朝鮮の問題もからんでくるのではないですか?

大 野

そのとおりです。不安定要素である北朝鮮の問題を解決できる道というのは、中国と韓国です。この2つの国を大事にしていきながら、北朝鮮ともなんらかの形で、国際社会の中で透明性を持ってつきあっていけるような形にしないといけないと思います。竹島の問題というのは、単なる韓国との領土問題だけには留まらないものを含んでいます。

小早川

北朝鮮と信頼関係の確立というのはできますか?

大 野

今のところまったく信頼できません。信頼できるなら、拉致問題などとっくに片付いているはずです。その解決の糸口となってくれるのが、韓国と中国です。そして、またアメリカも強い姿勢で北朝鮮問題に取り組んでもらわなければいけない。やはり、6者協議の枠の中で、それぞれが、それぞれの役割を果たしていくことが一番大切なのではないでしょうか。

小早川

領土問題は“利害”という観点で妥協することなく、独立国家としての“筋(すじ)”を通して、主張すべきは情理をつくして主張して頂きたいと思います。

国際社会の中での自衛隊
小早川

自衛隊が創設から50年経ち、課題や今後の展望、あるべき姿をどうお考えですか?

大 野

今の国際社会の中では、自衛隊の役割や期待されるものが大きく変わろうとしています。一番は自衛という問題ですが、「自衛のための自衛隊」ということを考えた場合、抑止力だけではもう防衛ができない時代になりました。例えば、アメリカの9・11の事件を見ても、アメリカは強いから攻めてこないかというと、テロはやはり攻めてきます。様々な恐怖に対して迅速、効果的に対応できるようにしなければならないのです。もう一つは、今までは、国際的に活動するということは、一方的に、日本が貢献するという考えでした。しかし、そうではなく、国際安全保障環境をよくすることが、日本の安全保障、平和に繋がるという認識をしなければならないのです。

小早川

国際平和と日本の安全保障は、同根だということですね。

大 野

お釈迦様の言葉に「自利利他」という言葉があります。自分の利益は他人の利益、他人の利益を追求すると自分に返ってくるという。まさにその言葉どおりの新しい時代を迎えようとしています。今の法律では、自衛隊の国際平和活動、協力活動というのが、付随的任務になっていますが、私は、それを本来の任務にしたいと思っています。

小早川

日米安全保障条約に基づく問題はいかがですか?

大 野

やはり、日本の平和と安全は、日本が中心になって自分のことは自分でやらなければいけないと思います。しかしそれは、日米安全保障条約の支えがあるからこそできることです。そのさらに大きな外枠である国際平和環境、安全保障環境をよくするために、自衛隊にがんばってもらいたいと思っています。ですから、我々が取り組んでおります、「トランスフォーメーション」、米軍の再配置の問題については、日米安全保障関係は50年先、60年先を見据えてやっていかなければいけません。

小早川

日米安全保障条約があるから、日本が今、安全だという現状は、非常に、重く認識する必要がありますね。

大 野

昔は、日本は基地を貸し、アメリカは人間力という「人間と土地との協力」だったのです。そうではなくて、やはりアメリカの人間力と日本の人間力、両方の人間力同志が協力していきたいと思います。

小早川

自衛隊も自己主張というか、自衛隊はかくあるべきだというのを国民のみなさんにお知らせをしていく。啓蒙、啓発をやっていく時期にきたのではないでしょうか。

大 野

おっしゃるとおりです。50年前の昭和29年というのは、ちょうど、三船敏郎の「七人の侍」という映画が流行りましたが、あの映画はまさに「自衛隊」です。村民が自分の食べるものを少し減らしても出し合って、七人の侍をやとい、村の安全をはかるという内容です。安全、安心は国の基本です。その安全、安心を司る行政機関が相変わらず「庁」ですので、「防衛庁」を「防衛省」に昇格させる。国を守るということは、命をかける、ということです。愛するふるさと、愛する家族、同胞を守るということです。自衛隊の役割が、国際平和活動を主要任務とし、国際的な視野も含めた中で、本当に国民の皆様に安全と安心をお届けするという役割をしっかり担えるように、私もがんばっていきます。

小早川

<聞き手・右>
社団法人福岡県
中小企業経営者協会

会長 小早川 明徳 氏

本日はお忙しいなか、ありがとうございました。今後の自衛隊の活動に期待しております。


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