 |
| 【北 川】 |
三嶋さんは高校まで野球、大学ではラグビーをおやりだったそうですが。
|
 |
| 【三嶋】 |
僕は、自分の歩き方はすべてラグビーから学んだと社員にもよく言います。トライは、皆がどうにかつないできた球を運んで、たまたま自分がゴールラインを切っただけだという意識なんですね。
|
 |
| 【北 川】 |
そういう意味ではお菓子作りもチームプレイですね。。 |
 |
| 【三 嶋】 |
そういうことです。昨日も焼きを失敗して、ああだこうだ言ってるのを「すぐ仕込みをやり直せ。それが先やろうが。終わってオーブンに入れてからなんぼでも言え」と怒りました。ラグビーではペナルティを取られたら、ぐだぐだ言う間に相手がパーッと来る。だから、状況を見てすぐ動け、言い訳はするなと。 |
 |
| 【北 川】 |
私の妻が、体調が悪いとおいしい料理ができないと言うんですが、プロの方はなおさらでしょう。何か気をつけていらっしゃいますか? |
 |
| 【三 嶋】 |
僕は今も、腕立てと腹筋とスクワットを30回ずつ、毎朝やっています。お菓子作るのは体力がないとやれないし、考えることにも体力はいる。それと、プロかアマチュアかということでは、プロはほめられたことより、失敗した時のことをよく覚えていますね。失敗を覚えている人間は伸びます。肝心なのは、失敗をどうやって自分の中に取り組んで成長するかだと思います。
|
 |
| 【小早川】 |
ところで、三嶋さんの会社では何かイベントがあるたびに「故郷(ふるさと)」を歌い、新入社員の歓迎会では「鯉のぼり」を歌うそうですが、これはどうしてでしょう。
|
 |
| 【三 嶋】 |
福岡県洋菓子協会の会長を引き受けたときに始めてからです。それまで最後は祝目出度に手一本でしたが、筑豊や筑後の人は知らないでしょ。どうやろか、「故郷(ふるさと)」を歌いましょうかと始まりました。「故郷」の何がいいかというと歌詞ですよ。特に三番の「志をはたして、いつの日にか帰らん」。僕はあれだと思うんです。あの時代の歌は三番が“決め"ですね。
|
 |
| 【北 川】 |
鯉のぼり」も三番ですか?。
|
 |
| 【三 嶋】 |
そうですね。三番に「百瀬(ももせ)の滝を登りなば、たちまち龍になりぬべき」とあります。龍門の滝を鯉が登ると龍になるという中国の故事ですね。うちの新人歓迎の食事会なども、最後に「故郷」を歌うんですが、その前に僕が「鯉のぼり」の歌詞の説明して、決して歌はうまくないが、気持ちで歌うから聞けと、ずっと新人の目を見ながら歌うんですよ、三番まで。
|
 |
| 【北 川】 |
昔の唱歌は文語でしょう? 意味が深いし、言葉が美しい。心に残るんですよね。
|
 |
| 【三嶋】 |
おっしゃる通りですね。やっぱり古典を読ませんと。うちは、製造部門で入社が内定した人間に、『坂の上の雲』を読んで、400字詰め原稿用紙20枚以上の感想文を書けという宿題を出すんです。新聞もろくに読まない世代だから、全6巻を読むだけで大変ですよ。
|
 |
| 【北 川】 |
お話をうかがっていると、三嶋さんの生き方そのものが会社経営に出ているなという気がします。
|
 |
【三 嶋】 |
今の50人ぐらいの規模であれば、僕の体臭がプンプンする会社でありたいし、お客さんもそれを期待されていると思います。ミーティングでは意見もいろいろ出るけども、決定は僕がする。社員の意見を採り入れて決定して、それがうまくいかんこともありますよ。でも判断は僕がしとるんですから、社員にあやまって、さっと軌道修正するようにしてますね。
|
 |
【北 川】 |
最後に、三嶋さんの味の原点は、お母さんのみそ汁だそうですが、そのお話を。
|
 |
【三 嶋】 |
まあ、象徴的な意味でのみそ汁ですね。子どものころはガキ大将で始末が悪かったんですが、台所でお袋の料理の加勢をするのが好きやったです。当時は今みたいに便利な道具や調味料もないから、お袋は野菜でも魚でも、おいしいものをと気持ちを込めて一生懸命に作ってくれた。僕はそのお袋のDNAを受け継いで、この仕事をやれているかなと、そういう気持ちですね。
|
 |