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中経協ニュース 2008年1月号

鉄や銅は5~600年で土に還る。しかし陶磁器は 一旦火を通してしまうと元の土には戻らない。だからこそ残るという怖さがあるのです。

重要無形文化財保持者
 中島 宏 氏

2007年7月、重要無形文化財保持者(人間国宝)の認定を受けられた中島宏氏に、伝統工芸をとりまく状況や作陶への思いをうかがった。氏の作陶への姿勢は、自分に妥協を許さず、常にアグレッシブ。独自性を高く評価される中島青磁、その世界を支える美へのこだわりを垣間見せていただいた。

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(左)昭和16年佐賀県生まれ。昭和33年、父親の工房に入って作陶を始め、昭和44年独立。青磁を中心とする技法・表現上の研究を重ねて創意工夫を加え、「中島青磁」として知られる作風を確立した。さまざまな陶芸展、工芸展で受賞歴多数。平成19年重要無形文化財保持者(人間国宝)認定。
(左) (社)福岡県中小企業経営者協会 会長 小早川 明德 氏
【小早川】

あけましておめでとうございます。このたびは、人間国宝の認定、おめでとうございます。作陶を始めて何年におなりですか?。

【中 島】

中学を出てすぐからですから、ちょうど50年になります。独立して青磁にとりかかってからですと40年ぐらいです。たくさんの方からお祝いを言っていただくのはうれしいのですが、日本の伝統的なものは急激に消え去ってきて、危機的状況にあるんです。海外では非常に人気があって評価されているのに、日本人はむしろ軽視しているという感じがします。

【小早川】

価値のあるものが理解できていないという感じですね。

【中 島】

ここ数十年は特に、社会の変わりようが激し過ぎましたね。和室が減り、お箸を使ってご飯を食べることすら減りましたから、陶芸に限らず着物や踊りなど、伝統工芸・芸能の世界は崩壊寸前です。伝統文化は1回滅びたらもう再生できません。たとえば、有田の就業人口や生産高は一番いいころの4分の1、5分の1になっていますし、土はもうない。天草陶石も限界が見えている。300年、400年と続いてきた有田が瞬く間に崩壊の危機です。恐ろしい気がします。 人間は行き着くところまで行かないとわからないんですかね。 戦争でも環境問題でも同じですが。

【小早川】

人間にはそういう愚かしさを捨てきれないところがありますけれど、代償が大きすぎますね。

【中 島】

受け継いでいく、残していくということが大事です。私は若い陶工たちから「先生はいいものとよく言うけど、どういうものがいいものですか」と、よく質問されます。そんな時に、人には好き嫌いもあるし断定はできないが、残るものはいいものだろうと言うんです。作家は少なくとも、飽きて捨てられたりしないものを作る努力をすべきだと思っています。

【小早川】

残るものとはどういうものですか?

【中 島】

その中に美が潜在しているものですね。ああきれいだ、美しいと思うものは、人は手放さずに代々伝えていくじゃないですか。日本は地形的に入り組んだ南北に長い島国で、モンスーン地帯にあって季節感が非常に豊かです。だからこそ、四季の美、風景の美を身近なものに映す工芸が発達したし、土地それぞれの素材や表現の違いが風土色となって、独自の美を生み出してきました。最近グローバルスタンダードという言葉をよく聞きますが、私は反対に風土色が色濃く出たものほど、世界のどこでも評価されるインターナショナルな価値を持つと思っています。

【小早川】

いいものを残していくためには、後継者の問題も大切ですね。

【中 島】

陶芸は染織や木竹工に比べればまだましですが、今はプロセスを単純化して機械を使い、職人がいなくても済むようになってしまいました。また、私は美というものは、失敗するかしないか、ぎりぎりのところに隠されていると思っていて、窯に入れたものの8割は割ってしまいますけど、今は窯業大学校などでも、土の選び方、釉薬のかけ方、火の入れ方など失敗しないやり方を教えます。そのせいか、作家の作品もどこか底が浅くなっているような気がします。

【小早川】

人の手をかけなきゃ付加価値は出ませんし、新しいものを作ろうとすれば冒険も必要ですからね。

【中 島】

何でもそうですが、同じ事を繰り返しやっていれば、腕はある程度上がるものです。ただし、創作となると、これは自分で努力しなくちゃいけない。私は独立した当時、本や参考品の購入、いいものを見るための旅行に人の10倍ぐらい投資しました。そして人の真似をしたり、自分の過去の作品と似たものを作ることは絶対にすまいと決めてやってきました。それは自ら停滞していることを示すことですから。

【小早川】

しかも先生は、陶芸のなかでも青磁の世界だけで常に新しい美を追究され ています。大変だと思います。

【中 島】

私は青磁で人間国宝にはなったけれど、青磁にこだわってはいません。青磁よりいいものがあれば、そっちをやります。私は賞とかもらわないほうが自由に作品が作れると考えていたんですが、応援してくださる方々のご恩に報い、若い人たちを刺激するためにも、今後も心に残るいい作品を作っていくしかないと思っております。

【小早川】

私どもの経営の世界にも通ずるお話でした。ありがとうございました。



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