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中経協ニュース 2007年11月号

豊かな物語性を持った日本神話を 素晴らしい島・壱岐に息づかせたい。

作家・脚本家
 南川 泰三 氏

地方からの文化発信がさまざまな形で試みられている。神話の島・壱岐では、日本神話を題材に地元の人々が創作した朗読劇のイベントを来年2月に開催予定。シナリオの添削や演出の指導などにご協力くださっている南川氏に、壱岐の島から神話の創作朗読劇を発信することの意義や期待を語っていただいた。

対談.jpg
(左)1943年大阪市生まれ。日本大学芸術学部卒業と同時に放送作家となり、ドラマやドキュメンタリーなど、数多くの作品を手がける。近年は放送作家を続けつつ、戯曲や小説にもチャレンジ。日本放送作家協会常務理事、日本脚本家連盟理事、東京国際映画祭実行委員。(右)平山旅館 女将 平山 宏美 氏
【平 山】

私たちは来年の11月位に、壱岐で日本神話をテーマにした「創作朗読劇ま つり」のイベントを1カ月ぐらいかけて開催しようと計画しておりまして、南川先生をはじめ日本放送作家協会のそうそうたるメンバーの方に、ご指導・ご協力をお願いしているんです。

【南 川】

あれだけの放送作家や演出家が、素人を集めた朗読劇を演出したり指導したりするのは、ちょっと普通ではあり得ません。どういう結果になるか、私自身も非常に楽しみです。

【平 山】

壱岐は本当に神話の島なんですよ。イザナキとイザナミが日本の八つの島を生んだ時、淡路島、四国、隠岐の島、九州に次いで5番目に生まれたのが壱岐の島で、別名の天比登都柱(あめひとつばしら)は、神々が天上界と行き来するための柱を意味してるんです。それから、猿岩とか左京鼻とか壱岐各地にある8本の石の柱は、すごい暴れん坊だった壱岐の島をつなぎ止めるためのものだと言われていますし、アマテラスオオミカミとスサノオノミコトの兄弟神である月の神、月読命(ツクヨミノミコト)の本宮は壱岐にあります。

【南 川】

僕も壱岐の島が神話の島だということで『古事記』を読み直して、改めてそのすごさに気づきました。日本神話は皇国史観につながるからと戦後の教育では教えられてきませんでしたが、あんな壮大なドラマを日本人がおろそかにしてきたのは、とんでもないことだと思っています。

【平 山】

本当にすごいお話ですよね。

【南 川】

僕らでもあれだけのスペクタクルな物語を、さあ書けと言われたらお手上げです。しかも宇宙や地球の創造のことまで書いてるんですよね。原典として中国の古い伝説などが入り交じっているのは事実ですが、原作が素晴らしくても脚色がまずかったら良いものにはなりません。そうした点でも『古事記』『日本書紀』は驚くべき物語世界ですから、壱岐を神話の島としてアピールするだけじゃなく、壱岐の人々が自分たちで物語を創作して発信していく土壌を作っていければ最高だと思います。

【平 山】

創作朗読劇の講座を受講したメンバーは、先生方から「早くシナリオを出せ」とせっつかれています。私は、壱岐の島の身近な土地にまつわるお話を題材にして、小さい子どももわかるようなシナリオを書こうと思っています。孫の一人は月読と名付けましたし、孫やおばあちゃんにも出演してもらってと…。

【南 川】

いいですね。神話というと『古事記』『日本書紀』がまず頭に浮かんで難しいと感じるかもしれませんが、海幸・山幸とかヤマタノオロチのお話とか、うろ覚えでも知ってる神話があるはずだから、それをベースにするといいですよ。たとえば天岩戸のお話は、そのままシナリオにしてもいいけれど、現代に置き換えて、お姉ちゃんと弟が大喧嘩して、お姉ちゃんがトイレに閉じこもってしまったと。そこで弟は友だちを集めて大騒ぎをして…というお話にしてもいいわけです。

【平 山】

楽しそうですね。みんな燃えて取り組んでいます。蛭子(ひるこ)の物語を書きたいという人もいれば、ラブストーリーを書いてきた女子高生もいるんですよ。結構、神話の世界は生々しいというか、人間くさい世界ですよね。

【南 川】

抽象化されたりしてはいますが、性交の場面や近親相姦の話も出てきますし、神話の世界はすごくエロチックです。おっしゃる通り人間くさくて実に面白い。純粋な物語として神話をきちんと浸透させていくべきだと思いますね。

【平 山】

みんなが神話に触れて育ったら、先祖を尊んだり、自分のルーツに興味を持ったり、自分は先祖があってここにいるというような感覚が育つでしょうね。

【南 川】

かつては日本のどの村にも、里にもあった神社ですが、最近調べたら、宮司さん一人で10社もの神社を統括しなきゃならない状況になっています。神社は村祭りなどの祭事でコミュニティの核になり、伝説や神話が守られていく土壌を作っていたんですけどね。僕は初めて壱岐の島を訪れた時、掛け値なしにあの島の素晴らしさに感動したんです。産物も風景も豊かだし、もちろん人の心も豊かです。そういう意味でも僕は、壱岐の島がそうした日本本来の豊かさを、もう一度掘り起こす原動力になってくれればいいなと思います。



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