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中経協ニュース 2007年7月号

10年、20年先の日本を担うリーダー養成は急務。 日本本来の深い精神性を備えたエリートを育てたい。

早稲田大学教授
 榊原 英資 氏

今年も宗像市のグローバルアリーナで、4回目となる「高校生のための日本の次世代リーダー養成塾」が2週間にわたって開催される。塾の創設メンバーの一人であり、塾長代理を務める榊原英資氏に、塾設立の経緯やその背景、そして今の高校生に足りないもの、期待することなどをうかがった。

榊原.jpg
1941年、神奈川県生まれ。1964年、東京大学経済学部卒業。1965年、大蔵省入省。入省後、ミシガン大学経済学部に留学、1969年、ミシガン大学大学院博士課程修了。大蔵省では財政金融研究所所長、国際金融局長、財務官を歴任し、退官後慶応義塾大学教授を経て2006年より現職。大蔵省時代から幅広く執筆活動を行い、著書も多い。
   
【長谷川】

大蔵省時代からの先生のご活躍は、“ミスター円"の呼称とともに私どももよ  く承知しております。その先生が「日本の次世代リーダー養成塾」を立ち上 げられた、そのお志からお聞かせください。

【榊 原】

端的に言えば、今の日本の教育に対する危機感です。私はずっと欧米を相手 に仕事をしてきましたが、最近は中国やインドが急速に発展しています。中 国にしろインドにしろ、実は高等教育のレベルが非常に高いですね。昨年末、中国トップの清華大学を訪ねたところ、全寮制のTVもない環境で、学生たちは日本の学生の5倍や6倍は勉強しています。ほとんどの学生が英語も 流ちょうに話しますし、理科系を重視して、エリートを育てていますね。なに しろ胡錦濤国家主席や温家宝首相をはじめ、今の中国の政治局常務委員9人 全員が技術系ですから。インドはインドでITが非常に強いですよね。イン ドのトップは全国に7つあるインド工科大学ですが、まさにエンジニアリン グとテクノロジーの学校で、これまた学生はよく勉強します。韓国も教育に 非常に熱心です。日本は高校生の8割が文化系希望ですし、理科系の学力が 落ちてしまっています。しかも大学に入ったら遊ぶという風潮が強くて…。

【長谷川】

このままだと、この先大変なことになりますね。

【榊 原】

今はまだいいけれど、10年、20年先には本当に大変なことになりますよ。 日本の技術と経済がこれだけ発展してきた背景には、それを作った人たちの 懸命な勉強と働きがあったわけですが、それが消えつつあります。だから今 こそ、本格的なエリート教育をやらなきゃいかんですね。世界の高校生の意 識調査で「偉くなりたいか」という質問に対して、中国は約7割、アメリカ でも4~5割はイエスと答えているのに、日本は1割なんですよ。でも、若 い人たちがそれじゃ困る。どんな職業を選ぶかは自由ですけど、やはりプロ として頂点をきわめたいという意欲がないと、国がおかしくなります。 「日本の次世代リーダー養成塾」は、そういう危機感から始めました。

【長谷川】

まだ色のついていない高校生のうちですから、2週間でも相当刺激が大きい    でしょうね。

【榊 原】

やはり高校生の多くが変わって帰っていきます。ただ、今の若者は肉体的に   も精神的にも弱いし、生活力がありません。非常に優秀な生徒が全国から集 まるのですが、たとえば掃除をしないので部屋が汚いし、洗濯せずに汚れ物 を段ボール箱に入れて親元に送ったりします。特に女の子に多いですね。 それから携帯電話やインターネットを頻繁にやっていて、人対人のコミュニ ケーションがヘタですね。

【長谷川】

自分から訴える前に周囲から与えられるからでしょうね。 それで個の世界  に埋没するんですね。

【榊 原】

そうなんです。これまで人と議論したりケンカしたり、してこなかったんで すね。だから、もちろん学問を教えることも大事ですが、人間社会の中で生 きていくこと、その基本をまず教えなきゃいけないと、やってみて気づきま した。貴重な体験をしましたね。

【長谷川】

そうした若者が増えているのは、私たち世代の責任だと言えるかもしれませ ん。さまざまな問題を政治家が悪い、政府のせいだ、学校が悪いと、主体性 なく批判ばかりしてきましたからね。私は仏教を学びましたが、仏教の考え 方ではすべては自己責任なんです。社会は自分の心の投影ですから、社会が 悪いのは自分が悪いんです。それが本来、日本人の受け止め方だったのですが。

【榊 原】

そうした日本的なものの考え方というのは大事です。日本文化のレベルは極 めて高いですね。ところが、戦後は欧米の方ばかり向いて、それを教えてこ なかった。非常に残念ですね。

【長谷川】

そうしたことも「日本の次世代リーダー養成塾」では教えようとされているわ けですよね。。

【榊 原】

毎年わずか160人ですが、これはずっと続けることが大事だと思っています。

【長谷川】

広い日本の中でも養成塾を福岡の宗像でというのは、どういうご縁だったんで しょうか。

【榊 原】

麻生福岡県知事をはじめ改革派の知事たちと、地方分権研究会というのを やったんですね。皆さん、今の教育に対して危機感を持っていましたので、そ の中で教育をやろうということになったのがきっかけです。九州の皆さんが非常に熱心だということに加え、宗像のグローバルアリーナが全国的にもない素晴らしいものでしたので。

【長谷川】

地方分権が進んで道州制、自治州なんてことになると、やはり教育がリードし ないと自治はできませんね。

【榊 原】

そうなんです。福沢諭吉も言ってますが、自立の基本というのは学問です。

【長谷川】
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<聞き手>
(社)福岡県中小企業経営者協会
会員 長谷川 悠一 氏
(はせがわ 代表取締役社長)

宗像には宗像大社があって、大陸との交流を物語る国宝をたくさん持っています。 福岡は日本とアジアの結節点であるという点でも、養成塾が福岡でスタートした のには大きな意味があると思います。今後の養成塾の発展に大きな期待をいたし ます。


福岡県中小企業経営者協会
福岡市博多区博多駅前2-9-28福岡商工会議所ビル1F
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