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中経協ニュース 2007年2月号

食と農は生きるための原点。食育をブームに終わらせず、 今こそ日本の暮らし、日本人の生き方を変えていこう。

西日本新聞社編集委員 佐藤 弘 氏
有限会社ぶどう畑 代表取締役 新開 玉子 氏

命を支える食と農に関して世の中の関心が高まり、スローフードや食育、地産地消などのキーワードを軸に、暮らしに根ざした視点からの見直しが始まっている。数十年にわたって農と食の重要性を訴え続けてきた“農家のおばちゃん”新開さんと、精力的に現在の食の実態をリポートし続ける佐藤記者が、それぞれの体験を元に食を語り合った。

対談写真(P4).jpg
(右)福岡市内で農業(ブドウ、米、ウメ、野菜)を営みながら、平成11年に農産物直売店&交流施設「ぶどう畑」を仲間と共にオープン。都市と農村の架け橋をめざして各地の農産物や加工品を販売するかたわら、食育や食と農業に関する講演活動などに幅広く活躍中。
(左)西日本新聞社編集委員。システム開発部、日田支局、筑豊総局などを経て連載企画『食卓の向こう側』シリーズに携わり、経済部で「農、食、くらし」を担当。福岡教育大学非常勤講師も務める。
   
【佐 藤】

私は「食卓の向こう側」などの取材を通じて、日本の食の驚くべき実態をいろいろと見てきました。今の若い人が口にしているものはむちゃくちゃです。朝食抜きは当たり前で、食事代わりにお菓子、食べたとしてもコンビニやほか弁、合間に甘いジュースと、そんな感じですから。

【新 開】

若いOLさん向けの雑誌の記事にも、朝は通勤途中のコンビニで朝食を買って、会社のデスクで食べるのが格好いいなんて書いてあったりします。それじゃあ人間としての体ができないですよ。少子化対策を国もいろいろ打ち出してますが、それ以前の体作りが問題ですよね。

【佐 藤】

かに。保育所の拡充とか言ってますけど、それ以前にもっと生きる土台の方に目を向けてほしいですね。教育に関しても、ゆとり教育をやめて授業時間を増やそうという方向に動いていますが、子どもたちは夜更かしして朝食抜きで登校するから、体が眠ってて、朝からぐったりしている子が目立ちます。授業を聞く態勢になっていない状況で、いくらカリキュラムだ何だと言ったってダメでしょう。それ以前の生きるための基本、つまり食にまず気を配るべきです。

【新 開】

子どもたちは食べることから作法やマナーを学ぶと思います。おいしかったら、心から「ごちそうさま」が出ますが、言わせても出ない。まず生きること、食べることの教育が必要でしょうね。最近“食育”で、農家のおばちゃんたちが学校に行ってみそ作りを教えたりしているんです。とてもいい事だと思います。しかし1回こっきりで終わることも多いんですよ。土を耕して種から育て、草刈りや水やりをして収穫し、自分で料理して食べて、食べられない部分は土に返す、そこまでして本当の食育だと思います。現在の食育は浮わついた感じがしますね。 。

【佐 藤】

やはり体験が大事です。料理でも農業でも、五感を使って体験するから体にしみ込むんですね。それに農業は、思うようにならないところがいい。世話が足りなくてうまく育たなかったり、天候不順や台風で全滅したり、虫や鳥に食べられたり、理不尽な目に遭って初めてどうすればいいか考えますから。さらにみそ作り一つでも、原料の大豆のことから世界の食糧事情がわかる、生育状況や花芽の観察をする、それから発酵食品のことを調べると、腸内細菌と一緒になって健康増進に役立つことがわかる。社会、理科、保健まで大きな広がりがありますよね。。

【新 開】

そうなんです。食と農を大事にすると国は安泰だと実感します。子どもたちだけでなく、大人も楽しみながら食育に参加してほしいです。食から世直しをすべきですね。私は農水省の政策審議会委員をしていましたが、経済界のトップやお役人は男性がほとんどで、食べ物ぐらい何だという感覚の方が多いみたいで歯がゆいんですよ。生きるということは男女平等の原点だし、食べることが生きることなのにと思います。

【佐 藤】

これまでの政策論議には暮らしの視点が欠けてました。今の日本の暮らしは、和風に見えて実は、衣食住どれをとってもすべて海外に依存しているのが実状です。衣食住の中から問題提起をしていく時に、女性の力は非常に重要です。

【新 開】

ここ30年ぐらいを振り返ると、食品産業界も売れて儲かればいいだけでなしに、もうちょっと体にいいものを作らなくちゃいけなかったと思います。国は国内の農業と食品加工業の連携をかかげていますが、外国産が安いから、今まで加工品の原料はほとんど輸入ものでした。でも、ここに来て流れが少し変わってきてます。佐藤さんの記事をはじめ、マスコミで取り上げていただいたことも大きいですし、食育で交流ができた子どもたち、直売所を利用してくださる方たち、皆さんから大きな力をもらっています。

【佐 藤】

つながりは大きなポイントです。かつて農家は作るだけで、消費者との接点がゼロでしたから。

【新 開】

私は直売所のお客さんたちに「農村を応援するには農作物を買ってやるしかない。草刈りや種まきはできやしないんだから、買い支えるだけでいい。そしたら後継者が一人残るのよ」って言っています。

【佐 藤】

生産者は消費者の健康に責任を持つ、そして消費者は生産者の生活に責任を持つ。そうした関係を足もとに築いていくことが必要ですね。そういう結びつきは、食べ物だけでなく、福祉や防犯の面からもより良い地域社会作りに役立ちますよ。

【新 開】

生産者にも、消費者に買ってもらってこそ生活できるのだから、裏切ってはダメだと一生懸命言っています。どうしても少しは農薬を使わないと育たない作物もあります。それを隠さず生産履歴をしっかり示しなさい、なぜそうしたかは販売する私たちが説明するからと。間に立って販売する私たちが生産者の情報を消費者へ、消費者の情報を生産者へ伝えることで、生産者も消費者も意識が向上してきています。そうやって食べ物に対する思いが広がれば、うれしいですね。。

【佐 藤】 私もマスコミの立場から応援していきます




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