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2007年01月31日

中経協ニュース 2007年1月号

雇用延長、出生率上昇、教育基本法改正などが実現。2006年は日本史に残る転換点になるかもしれません。

福岡県知事
 麻生 渡 氏

福岡県を率いて12年目となる麻生知事は、「公正と奉仕」を基本姿勢に県財政の健全化や柔軟な行政システムの確立、広汎な青少年教育施策、自動車産業、ベンチャー育成をはじめとする産業振興等に取り組まれており、ダイナミックかつ安定感のある施策、正義感あふれる政治姿勢には県民の信頼も厚い。全国知事会の会長としても活躍されている知事に、2006年を総括していただいた。

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昭和14年北九州市戸畑区生まれ。昭和38年京都大学法学部卒業、通商産業省入省。各部署でキャリアを積み、特許庁長官を経て平成7年福岡県知事に初当選。現在3期目。平成15年九州地方知事会長に就任、平成17年2月から全国知事会会長を務める。
   
【小早川】

2006年も暮れてまいりました。本日は知事の目で今年の日本を総括していただければと思います。

【麻 生】

私は、今年はおそらく日本史に残るような年になるんじゃないかと思っています。その理由の一つは、今年の4月に施行された高齢者雇用安定法ですね。この法律で65歳までの定年延長か継続雇用を企業に要請したところ、最初はなかなか難しいという反応でしたが、実際には見事に普及いたしました。今は2年ぐらいの継続雇用が主ですけれども、今後は65歳定年の方向へ動くことになりそうです。団塊の世代が退職して労働力が不足し、技術の伝承もできないという、いわゆる'07年問題も、私はもう起こらないと思います。

【小早川】

今は60歳と言いましても若いですからね。

【麻 生】

以前は人間が65歳まで働けるとは想像もできませんでしたが、現在は、我々の知力や体力は実際の年齢の「七掛け」と言われていますね。だから、70歳は七掛けで50歳ぐらいです。そのような実態を反映して、65歳まで働いて当然の社会へと日本が変わりつつあるのは、生き甲斐という意味においても、いずれ世界的に進む高齢化社会に新しい突破口を作ったという意味でも、大きな意義を持ちます。これは将来の人類の生き方に大きな影響を与える出来事になるかもしれません。

【小早川】

高齢化の一方で少子化の問題も深刻です。急激な少子化で、社会の仕組みがどう変化するかわからないという人も多いんではないかと思いますが。

【麻 生】

今年はどうも出生率が上がりそうですね。これは、たまたま団塊の世代の子ども世代が結婚・出産の時期を迎えたからであって、一時的な現象だという説も有力です。しかし、一旦歯止めがかかったのは大きな出来事ですし、私は少子化傾向が底を打って転換点に達した兆候じゃないかと思っています。昨日も若いお母さん方と話をしましたら、ここ5、6年ぐらいの間に、保育所なんかの整備が進んできた、社会全体が子どもは大事だ、子育てをしている人を応援しようという暖かい雰囲気になってきたということを言っておられました。 その意味でも、我々はこの転換点を機に変わっていく努力をしなければいけません。

【小早川】

今年の大きな出来事と言えば、やはり安倍内閣の成立ではないですか?

【麻 生】

そのとおりです。と言いますのは、この内閣はずっと歴代の自由民主党政権ができなかったことをやろうとしているんですね。その一つは教育基本法の改正です。今の教育基本法は、端的に言いますと、人権や自由の大切さといった国際的・普遍的な価値を強調しています。これは、日本人が国際社会の中で発展するために非常に大切なことです。一方で、日本の歴史とか日本人としてのものの考え方を教えるようには書いてないんですよね。今回の改正内容をどう具体化するかについては、今後も検討なり議論が必要ですけれども、やはり日本人としての教育のあり方を基本から考えるという意味では、今年は非常に大きな転換の年です。

【小早川】

今年は外交、特に対アジア外交が大きく揺れた年でもありましたね。

【麻 生】

アジアの中でも、今後はますます対中国政策が大事になっていきます。安倍総理は就任後直ちに中国を訪問し、新しい日中友好の方向性について合意しました。これは非常に重要で意義のあることです。中国は今、経済的に猛烈に台頭してきていますが、依然として中国共産党の一党独裁体制であり、内部の言論の自由や人権は尊重されていると言い難いですし、軍備も増強しています。このままであれば、我々は非常に不安定であり、危険じゃないかという考え方のもとに、安倍内閣はオーストラリア、タイ、インドといった国々とも糾合して民主連合というものを作り、中国に対して民主化を求めていこうとしています。

【小早川】

福岡県にはいろんな商工振興策をとっていただきまして、我々中小企業は恵まれた環境下にあるわけですが、国の経済政策のスタンスはどうなんでしょう。

【麻 生】

安倍政権は明確に成長政策路線をとっています。バブル崩壊後の十年に膨らんだ借金を増税で消そうという議論もありましたが、少しでも経済が成長すれば、税収が上がり、失業者が減り、生活保護をはじめとする社会保障の支出も減るわけですから、その中で借金を吸収していこうという考え方なんですね。 いずれにせよ、今年はいろんな意味で大きな転換の年であったと思います。転換を経て、今後の日本がどうなるかは、政治的な、あるいは世界的な状況の変化にも左右されますが、長い歴史の中で見た場合、我々は今、明らかに正しい方向に向かっていると考えていいと思います。また来年、がんばりましょう。

【小早川】
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<聞き手>
(社)福岡県中小企業経営者協会
会長 小早川 明德 氏
(福岡産業振興協議会会長)

非常にすさまじい勢いで時代が変わっておりますが、我々中小企業は変わっている時代こそチャンスがあると常に思っております。心からの期待とともに新しい年を迎えたいと思います。

2007年01月29日

中経協ニュース 2006年12月号

日本という国を立て直し、日本文化を再生するには、 共同体の原理を学び、市場原理との均衡を図る必要があります。

拓殖大学教授/日本文化研究所所長
 井尻 千男 氏

井尻千男氏は、拡大・拡散する方向に動く市場原理と求心的に働く共同体原理の両方を語ることで、国や都市、文化のあり方を斬新かつ広範に論評されている。特に氏の共同体論には日本や地域社会再生のヒントが多く、町長として旧大山町を引っ張ってきた三苫氏との対談は、熱と共感のこもったものとなった。

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1938年山梨県生まれ。立教大学文学部日本文学科卒。日本経済新聞社入社後、記者、コラムニストとして活躍し、編集委員を経て1997年退社。同年より『週刊新潮』にコラム「世間漫録」を連載。2004年8月からスカイパーフェクTV「報道ワイド日本」にレギュラー出演。著書に『自画像としての都市』『日本再生』『消費文化の幻想』他多数。
三 苫 私は戦後60年の間に日本のかつての文化が失われてしまったこ とを憂えている一人ですが、近年になって食べ物にしてもファー ストフードからスローフードへ、あるいはロハスという方向に動 いています。アメリカナイズされた日本に揺り戻しが来て、日本 がアメリカからヨーロッパ指向に変わりつつあるのではないかと 感じているんですが。
井 尻

日本は歴史が古くてさまざまな文化を育んでいるという意味では ヨーロッパ的で、日本人の感受性もヨーロッパとの連帯の方がし やすいところがあります。でも戦後、占領政策があって、急速に アメリカの影響を非常に強く受けました。文明論的に言いますと、 ファーストフードはアメリカの象徴、ヨーロッパはスローフード なんです。日本人がちゃんとした家庭料理を回復し、祈りや感謝 をこめて食べるということはスローフードですよね。ファースト フードには感謝も祈りもなくて、ただのエサです。そういう違い がありますから、日本は食文化をあるべき姿に戻すということだ けでも相当大きい文化活動になり得ますよ。なお言えば、三苫さ んも関わっておられた大分の一村一品運動。あれも食材を量的な 規模だけで考えるんじゃなくて、いかに付加価値の高い良い食材 を作るかの競争ですし、世界に与えた影響は大きいですよ。。

三 苫

先生の共同体論に関連しますが、旧大山町では38年前からイス ラエルのキブツに若い青年たちを送っていたんですよ。 それはキ ブツの共同体社会を学習させる為です。キブツの共同体を学習し た彼らが今、町の中核を担い、まさに運命共同体という意識で町 を愛し、誇りを持って外部に郷土愛を語っております。

井 尻

いや、驚きました。それはもっと声を大にしてください。私は共 同体と市場原理という二つのことを言っていますが、共同体の究 極の形がキブツです。もう一方で世界金融においてもユダヤ資本 は強い。一つの民族が共同体も探求し、同時に市場原理も展開し ていくというユダヤ人独特の二元論には、非常に学ぶべきことが 多くあります。日本人もグローバリズムの市場原理を追求せざる を得ないとしたら、同時に共同体の原理を教えるべきです。僕は 共同体と市場原理の均衡を探すのが、政治家の大いなる役割だと 思います。

三 苫

憲法論や教育基本法の改正などの議論にも、先生のおっしゃるよ うな哲学が必要ですね。

井 尻

教育基本法は非常に大事な法案なのに、野党が審議拒否だとか、 言ってみれば政局がらみにしちゃってるというのが日本の政治の 不幸ですよね。こういうケースこそ与党と野党が協力して、多少 の修正方向に歩み寄ってやるべきなんですが。

三 苫

子どもの問題をはじめとして、今の世相は本当に乱れきっていま す。そのあたりを議論するにあたっても、先生の言われる共同体 論のようなものがベースにあればと思います。

井 尻

日本という共同体が蓄積してきた知恵や文化を次の世代に引き継ぐ、僕はこれが義務教育だと思っています。ですから義務教育にこそ、自国の歴史の素晴らしいものや、日本という共同体の構成員であるという国民意識を大いに盛り込まなきゃいけません。いじめをきっかけにした子どもの自殺なんかの報道に接しますと、僕は戦後の教育の問題ももちろんですが、やはり家族や地域社会という共同体が衰退して、傷ついた子どもを救済できなくなっていると感じます。子どもたちは何で今、自分が生きているのかがわからない。自分の存在が稀薄になって、死の誘惑にかられてしまう。しかし、共同体意識はそういう時に個人を支えるんですよ。素晴らしい日本の歴史と共同体の中に自分が誕生して、親や兄弟やみんなに支えられて生きてるんだという自覚と勇気が生きる力になるんです。子どもだけではなく、日本ではもう連続して7年ぐらい、毎年3万人以上の大人が自殺してるんですね。大人の自殺も同じく、立ち直る人間を支援したり、傷ついた人を包み込んで盛り上げる共同体の助け合いの精神というのがなくなっていることが大きいと思います。教育に関わる人や政治家は、この問題を深刻に受け止めないといけないですね。

三 苫

最近、イスラエルのコーヘン大使が日本の武士道とユダヤ魂について講演され、日本は戦後60年で武士道をなくしてしまったという話をされたんですよ。同じように台湾の李登輝前総統も日本の武士道精神の大切さを説き、日本の現状を憂慮されていました。

井 尻

コーヘンさんは武道を大変修練されてますし、武士道も筋金入りですか ら、かつての誇り高い日本民族がどうしてこうなっちゃったんだろうとい うことになるんでしょう。ユダヤ人と日本人は、マサダの戦いでの集団 自決と大東亜戦争末期の特攻に見られるように、ある共通した気質を持っていると私は思います。両民族のその後の生き方を比べても、なるほど、歴史というのは大変おもしろいなと思いますね。

 三 苫   今こそ、日本本来の文化を取り戻す時だと思います。お忙しいと ころ、いいお話をどうもありがとうございました。
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<聞き手>
(社)福岡県中小企業経営者協会
理事 三苫 善八郎 氏

2007年01月12日

中経協ニュース 2006年11月号

国際情勢と安全保障のあり方が大きく変化している。 日本の安全、防衛政策にさらなる理解と関心を。

衆議院議員、前防衛庁長官
 額賀 福志郎 氏

額賀氏は小泉内閣で防衛庁長官を務め、米軍再編問題やイラクに派遣された自衛隊の撤収、北朝鮮の核開発疑惑など、山積する難題に敢然と立ち向かってきた。激変する国際情勢の下で国民の安全への意識も高まりつつある中、任期中の仕事、今後の自衛隊や防衛庁の展望などについてお話をうかがった。

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昭和19年茨城県生まれ、早稲田大学政治経済学部卒。 昭和53年から茨城県議会議員を2期務めた後、昭和58年に衆議院議員初当選。 以来、現在まで8期当選を果たし、その間、内閣官房副長官、防衛庁長官、 経済財政・IT担当大臣など内閣・自民党の要職を歴任。小泉内閣でも防衛庁長官の重責を担った。
小早川

額賀さんは日本の防衛政策と国際情勢が激変する時に、防衛庁長官を担当されました。振り返ってみて、どうでしたか。

額 賀

昨年、防衛庁長官を拝命した時に小泉総理に言われたのは、米軍再編問題をき ちっと片づけてくれということと、イラクに派遣している自衛隊を無事に撤収 する段取りを考えてくれということの2点でした。いずれも非常に難問でした。 米軍再編については抑止力の維持と負担の軽減がキャッチフレーズでした。防 衛力や安全保障力を落とさず、基地を減らし、基地の負担を減らすという二律 背反のような交渉をするわけですから、容易ではありませんでした。ただ、日 本はきちっと言うべきところは言って、日米双方とも理解の上で最終合意に至 りましたから、これが将来の新しい日米同盟の展望に結びついていけばいいな と思っております。

小早川

イラクにおける自衛隊の人道復興支援活動は、現地の方たちに随分喜んでいた だけたようですね。

額 賀

ええ、水の供給、医療支援、学校や橋の再建などの社会資本の整備を行ったわ けです。私がサマワを訪れた時には住民や子どもたちが目を輝かせて握手を 求めてきてくれて、成果を実感しましたね。撤収に際しては、イラクの人々に も多国籍軍にも感謝されつつ快く見送られることが大事でしたから、撤収期限 を決めてイラク政府と多国籍軍の説得に誠意をもってあたりました。2年半の 活動期間、イラクに向けて一発の銃弾を撃ち込むこともなく、また一人の犠牲 者も出さなかったことは奇跡的だと思います。

小早川

任期中は、ほかにも防衛庁関連でさまざまな事件が起こりましたが。

額 賀

本当に次から次へと問題が起こり忙しかったです。防衛施設庁の不祥事やコン ピュータ・ウイルスによる機密情報の流出、さらに北朝鮮ミサイル発射と、い ろいろありましたね。それぞれが日本の安全保障にとって非常に重要なテーマ ですから、しっかり受け止めてチャレンジした結果、何とかやり遂げることが できたかなと思っております。

小早川

我々も額賀さんがこの時期に長官で良かったと思います。最近は安全保障に関 する考え方や対応の仕方が、世界的に変化していますね。

額 賀

環境が変わってきていますからね。日本はサリン事件や阪神淡路大震災、北朝 鮮の核疑惑を経験した90年代半ばから新日米安保共同宣言に沿って周辺事態 法を作り、有事法制、国民保護法制を作りました。アメリカも9・11事件をき っかけに対応を変えています。テロでも国と国との戦争より以上に被害が大き く出る場合がありますし、むしろ軍と軍じゃなくて民間を直撃することですか ら、従来の安全保障とは違った形の対応を迫られたんですね。

小早川

日本の自衛隊にとっても、それこそ戦後60年で初めての出来事ばかりですが。

額 賀

国内各地に自衛隊の基地があります。米軍の基地も含めて、国民にどう理解し てもらうか、日米の基地がどのように連携していくのかといったことは、安全 保障の基本的な部分ですよね。現在、防衛施設庁の事件を契機に防衛庁全体で 査察体系を作り、組織の大変革を行って二度と過ちを起こすことのないように 国民の信頼回復に努めております。また、最近は日本の国民と国家を守るとい う自衛隊本来の役割以外に、災害復旧や国際平和協力活動の仕事がますます増 えております。さらに信頼のおけるしっかりした組織を維持していくためにも、 防衛庁から防衛省への昇格法案を通していただけるよう法案を提出していま す。その際には国際平和活動も国民防衛と同じく、本来の任務として明文化し たいと思っているんです。

小早川

そうなると隊員の志気が一層高まるでしょうね。

額 賀

防衛省への昇格法案は、昭和39年に一度国会に出されたけれども、結果的に は廃案にされてしまいましたからね。いわば長年の悲願ですよ。

小早川

今回の北朝鮮への対応は、国民にかなり評価されたんじゃないかと思うんです。 今の国民の反応というか、安全保障に対するバランス感覚というのは、非常に 良くなりましたね。

額 賀

そうですね。かつては日本人の安全についての意識は稀薄でしたけれど、今は 安全や治安、それから安全保障についても、かなり関心を持ってきているんじ ゃないですかね。残念なことに地域の治安が乱れて、学校だって生徒が安心し て通えないという状態ですから、そういうことと連動しているんですよね。家 や学校の安全も地域の安全も全部、国の安全に連動するんです。

小早川

本当にそうですね。自衛力にしても、私は人間の免疫力と一緒だと思うんです。 外敵が入ってきたら免疫力で退治してしまわないと、自分がやられますから。 そういう意味では地域も学校も国も、一つの生命体として延長線上にあるわけですね。


   
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<聞き手>
(社)福岡県中小企業経営者協会
会長 小早川 明德 氏
(福岡産業振興協議会会長)