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| 深 田 |
先生には『ル・武士道』という著作もおありですが、愛国心と武士道という観点からはいかがでしょう。 |
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| 竹 本 |
西洋人も日本の武士道を言うたびに、フィデリティ(忠誠)が大事だと言いますが、問題は何をもって、何に対してフィデリティなのかということです。愛国心とか郷土愛になりますと、西洋の場合はフィデリティの超越的な対象としてキリスト教があるように、宗教的なもの、スピリチュアルなバックが考えの上で必要になってきますね。そういう意味で日本では、憲法十七条に「和を以て貴しと成し、忤(さから)ふること無きを宗とせよ」と定めた聖徳太子の時に初めて、スピリチュアルなものが出てきたと私は思います。今の愛国心論議に欠けているのは、深いスピリチュアルなものの現れとしてフィデリティがあるかという見方です。単に自分の国だから愛するというものではないはずです。 |
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| 深 田 |
スピリチュアルとは精神ですか? |
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| 竹 本 |
私も最初はスピリチュアリティを精神性と訳していましたが、このごろは霊性、霊的性質と訳すようになりました。フランスの書店では日本の禅を筆頭に、チベット密教、武士道、さらに武道なんかもスピリチュアリティの棚に入っています。スピリチュアリティの領域はかなり広いし、訳すと精神性ではないと思います。 |
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| 深 田 |
精神性と霊性の違いというのはどういうふうに捉えたらいいですか? |
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| 竹 本 |
私の恩師である鈴木大拙先生が『日本的霊性』という本を書いておられて、宗教的なものを契機にして出てくる、精神よりもっと深いところが霊性だと言っておられますね。ただ「宗教」は現代人には引っかかる言葉でしょう。なぜなら宗教はセクトへの帰依がつきものですから。私はそこをスピリチュアリティと言えばいいんじゃないかと思います。普遍性があるし、強制がなくて自由なので、どんな人でも引きつける力がある。禅の流行もそういう理由だと思います。
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| 深 田 |
日本よりフランスの柔道人口の方が多いのも、禅と関係あるんでしょうか?
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| 竹 本 |
剣道もそうです。日本の方が本家だから盛んだとは、もう何についても言えないですね。文化はそれを愛する者に所属するというのが私の持論です。たとえばルーブル美術館が誇るミロのビーナス、サモトラケのニケ、モナ・リザの三つの名品は、どれもフランス芸術ではありません。禅だってもとは日本のものではなく、インド、支那、日本と来ていますよね。日本でなぜ禅が栄えたかといえば、日本には神道というスピリチュアリティがバックにあったからこそ、それが禅を吸収していったんだと私は考えています。この点で私は、日本は禅でもって初めて霊性を得たという大拙先生とは見方が違います。ただ、大拙先生がおっしゃるので正しいのは、西洋の神か悪魔か、敵か味方かのような二分法を嫌う禅の徹底性でしょう。「動いているのは幡(はた)か風か」という有名な公案(禅問答)があります。これは幡と答えてもいけないし、風と答えてもいけない。動いているのは自分の心なんですね。ついでに申し上げれば、大拙先生はやはり、ブッディストとして最初は神道を嫌ってました。それが変わっていったのは出光佐三さんの影響だと私は見ています。
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| 深 田 |
それは戦後のことですか?
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| 竹 本 |
戦後ですね。出光さんの書いたものを読んだ大拙先生がファンレターを出して交流が始まったんです。出光さんはいつでも天皇の御前にありたいと、帝国劇場の一番上に本社を置いたほどの皇室崇拝者です。昭和天皇は民間人の死を悼む御製(ぎょせい/和歌)は二首しか残しておられませんが、その一つが出光佐三を悼む御製です。私はまさにこれが君臣の契りであり、愛国心の軸になると思いますね。臣は君を慕い、君は朝な夕なに国民(くにたみ)安かれと神に祈られる。 皇后陛下が「皇室は祈りでありたい」とおっしゃっていますが、一体祈りとは何かという問題にもなってくると思います。皇后陛下の御歌(みうた)に「神祀る昔の手振り守らむと旬祭に立たす君を畏(かしこ)む」とあります。旬祭は毎年1月の宮中参殿への天皇自らの参拝のこと。旬祭にお立ちになる天皇のお姿をありがたく拝し、お見送りになる心境を詠まれた御歌で、皇后はいわば国民の立場なんですよね。しかし、畏まれている天皇ご自身が、天照大神と八百万の神々に対して畏み、祈りを捧げるために宮中参殿にお出かけになるのです。万世一系の天皇は、ずっとそうして皇(すめろぎ)の道を踏み行ってこられた。 我々には天皇しか見えないけども、 天皇があって道があるのではなく、 道が天皇より先行してある。 『三銃士』の著者であるアレクサンドル・デュマが王道について記した言葉を借りれば「天皇よりもっと重要なものがある、それは皇道である」ということです。
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| 深 田 |
皇位継承について、さまざまな論議が行われていますが。
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| 竹 本 |
大事なのは皇の道という不滅のものがあり、それを踏み行うのは常に皇でなければならないということなんです。だからこそ万世一系の天皇が我々にとって意味を持ち、ありがたいのではなかろうかと思います。男系女系なんていう問題じゃないんですよね。
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| 深 田 |
お話を聞いて非常にすっきりいたしました。私も園遊会で天皇皇后両陛下を間近に拝して、まさに霊的存在だと感じました。特に皇后陛下にはお言葉をかけていただいて感激いたしました。皇后陛下のお歌の本をフランスで出されたそうですね。
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| 竹 本 |
御歌集『瀬音』から選ばせていただいたものを中心に53首を掲載しております。私はその翻訳と克明な訳注、ご年表、著作から作詞作曲も含めた皇后の作品目録、 それからあとがきを書かかせていただきました。 出版にこぎ着けるまでいろいろと大変でしたが、皇后様もお喜びくださったようです。
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| 深 田 |
1998年にインドで開かれた国際児童図書評議会の基調講演、あれが皇后様の名声が世界中に知れたきっかけでしたよね。
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| 竹 本 |
ええ。私もあとがきで、その話を枕にいたしました。また、皇后陛下とお話しして「私は日本で天使に会った」と言ったフランスのジャン・ギトゥン教授の対話もあとがきの最後に書きました。お許しが出たらの話ですが、日本での出版も考えています。
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| 深 田 |
<聞き手>
(社)福岡県中小企業経営者協会
理事 深田 康氏 氏
(㈱深田運送 代表取締役社長)
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日本語版の本を心待ちにしております。本日はありがとうございました。
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