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中経協連合会 会長挨拶

最近、地図の魔力に肝を冷やした。地図は、小さな存在であっても自分の意志によって世界の中心たり得る。しかし、その中心の置き方によって地図模様が一変する。皆さんは中国を中心とした地図をご覧になればご理解頂けると思うが、まるで日本は中国の防波堤のような存在に映っているではないか。恥ずかしいことながら、いささか狼狽(ろうばい)し小さく声をあげてしまった。
地図を描くことは自由。他の誰もが自分を中心に描くことを防げない。そして、その地図模様の事実を誰もが事実として直視し、無論、異論など唱えることもない。それぞれの立場の尊重である。但し、人間も国家も「欲望」という本能が際限なくある。生きとし生けるもの、少しでも自分の領域を拡大したいという衝動に駆られることは否めない。よくよく考えると、個人の土地の境界線でも隣地の所有者との間にいざこざが絶えない現実がある。ましてや、当初から強奪を意図し、陰湿な仕掛けをしてくるイジメや詐欺や窃盗団のごときは、毅然として世論を喚起しながら、「法」によって裁き、「法」によって主張し、「法」によって律する他はないのではなかろうか。日本人の多くは、人間であれ国家であれ、それらの欲望は、人間の「常識」と「自制心」をもって制御できると錯覚している節もあるが、それは、まさに絵空事に等しいということを今日の国内外の出来事が教えている。
先日、尖閣列島において中国の漁船がわが国の領海上、停船を命じる巡視船に明らかな故意を持って衝突を繰り返したため海上保安庁はやむなく船長を公務執行妨害罪で逮捕した。中国政府は、閣僚級の交流、日中知事交流、日中青年万博交流等の中止を矢継ぎ早やに打出し、レア・アースの輸出の足止め、大型の観光団の訪日や、SMAPの公演までも中止した上、温 家宝首相が国連総会に出席した際、マスコミを通じわが国への一層の制裁強化を表明したが、結果的には国際的にも裏目とでて、各国首脳の中国への警戒と懸念を強く抱かせることとなった。
加えて今回、ノーベル平和賞を受章した中国人民主活動家 劉 暁波氏への対応に至ってはその選考過程で執拗な圧力をかけただけでなく、受章後においての中国国内における新聞、テレビでの報道を制限、夫人の受章式への出席も不許可とするなど、共産党一党独裁の政治体制の非民主性を中国国内外に宣言し喧伝(けんでん)する格好となったのである。
そのノーベル賞の受章式に「出席への配慮が望ましい」との見解を繰り返し述べた菅総理への嫌がらせか、尖閣事件の日本側発言対応への牽制か、中国四川省成都など地方4都市で大規模の反日デモが拡大し、人民は日本料理店や日系の家電、スポーツ用品店などを襲い、野盗のごときふるまいに終始し路上の日本車をも破壊するなど暴徒化した。何とその暴動について中国外務省の報道局長は「一部群衆が日本側の誤った言動に憤慨するのは理解できる」との談話を発表。テレビでその模様を目の当たりにした日本国民の多くは、ようやく基本的な社会体制の土壌の違いを実感したのではないだろうか。前回のデモは主に上海、大連などの沿岸部4都市、今回のデモは主に内陸部4都市と、デモの混乱とは別に、勃発するデモの地域は何だか戦略的で計画的なニオイすらするのは一概に穿(うが)ち過ぎであるとは言えまい。その後、都市によっては、警察隊の警備体制が強化されてきたところもあるが、中国当局が規制した背景には、これ以上エスカレートすると、人民の根底にくすぶる自国の社会体制への不満が爆発し反体制運動の火に油をそそぐ結果となることを恐れたと言われている。
尖閣諸島の問題にしても、今回のノーベル平和賞の問題にしても、最近、鎮静化した日系企業の労働争議にしても、それを意図して演出する中国の実態と次なるネライを私達は充分に察知しておかねばならぬと思う。ロシアのメドベージェフ大統領も日本政府の警告を無視して北海道の国後島に入った。海洋国家日本の領土への揺さぶりが続く。漁場を奪われる漁民、略奪される資源、脅かされる日本企業、これらの安心安全と国家としての権益を守るためには、経済団体としてもその使命に照らして新たな対応を模索せねばならぬ時代となった。わが国政府の外交や産業政策にその処方箋はあるのか。共産国家における歴史の捏造(ねつぞう)、歪曲(わいきょく)、隠蔽(いんぺい)は常套(じょうとう)手段。総理はじめ民主党の幹部は、日本共産党にでも対応策を教えてもらう他はあるまいと思う今日この頃である。
2010年11月
社団法人福岡県中小企業経営者協会
会 長 小早川 明德