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中経協連合会 会長挨拶

謹んで新年の御挨拶を申し上げます。
鳩山民主党政権が発足して3ヶ月。内閣支持率54%超、民主党支持率28%超といずれも予想以上の支持率を維持している。総選挙におけるマニュフェストの財政的裏付けに対する懸念や、産業政策、労働政策、あるいは教育政策や外交政策への懸念も抱きつつも国民の多くが「変わった」ことへの期待が種々の不安を上回っているというこの事実を直視するとき、従来の政権与党自民党がいかに国民の意志や期待に背を向けてきたか。その罪の深さ、失望感の大きさを推し測って余りあるものがある。
自民党の大敗の裏には何が潜んでいたのか、今回の政権交代で学んだことは多い。この退潮現象は最近急に始まったことではない。小泉政権の民営化路線や米国型グローバリズムの推進で生じた格差社会への反発か、安倍、福田、麻生の歴代内閣への政策不信か等、犯人探しも表面的なことで、本質的には案外根深いものがある。最大の要因は目先の人気取りや票田に気をとられ、自民党結党時の夢と志の継承を忘れたからに他ならないと思う。
選挙期間中訴え続けてきた「自民党の底力」が民主党の「政権交代」に呑み込まれてしまった。何故か。本来の自民党にはかつて‘’底力‘’があった。その底力は自民党の支持基盤が持つ、日本の伝統文化に根差す精神文化をよりどころにする保守層の幅の広さと厚さにあったように思う。その‘’根っ子‘’の部分が政治の本質からかけ離れた目先の権力争いと自分の選挙地盤の培養に汲々とする過程においてズタズタに切りさかれ根腐されした結果、張るべき根っ子が枯れ果てて再生不能に陷ったのである。
戦後64年の間、幾度びか政治思想を異にする政党と政権欲しさに連立を組み票田欲しさに木と鉄を継ぐような無理で無意味なことを重ね、政治に筋を通すことすら忘れてきた。その結果、‘’底力‘’となるべき支持層の乖離(かいり)を生じさせたのであった。まさに、先達の残した遺産を自分達が築いた財産であるかの如く錯覚し、驕(おご)りと無知が為さしめた業である。
思想という節操は政治において一番大事な価値である。‘’底力‘’は追い込まれた時に生じる「思想性」を背景にした‘’バネ‘’である。そのバネは‘’信頼‘’という精神的裏打ちによって初めて発揮されるのではなかったのか。
ともあれ、自民党は下野し、民主党が政権を奪取した。政権が変われば成長産業の主役も変わる。新しい産業も芽ぶいてくる。経済は現実を映す。従来光が当っていたところが影となり、影の部分に光が当たることも多い。ニュービジネスのチャンスでもある。新しい時代の方向性や時代の課題を読みとり新政権の行方に添った経営態勢をいち早く整えるため徹底した論議を重ね、時代に向きあう経営に舵(かじ)を切らねば時代の波に押し流されてしまう。具体的対応が急がれる時代である。今年も皆さまが御健康で御活躍あらんことを心から祈念申し上げ御挨拶といたします。
2010年1月
社団法人福岡県中小企業経営者協会
会 長 小早川 明德