|
かつて、福博の経済人を中心として、名士劇の興行をやっていた時代があった。よき時代の象徴的行事で、師走の風物詩でもあった。
出演者は連日連夜、超多忙の仕事のやり繰りをしながら稽古に通い、汗を流したと言う。
いわゆる“習いごと”は、お師匠さんに“仕える”ことであり、“学ぶ”ことである。
“学ぶ”ことは“真似ぶ”ことともいわれているが、日頃は他人様に学ぶことなど縁遠い経済界のリーダーが、幼な児のごとき素直さでお師匠さんに対峙するのである。
そんなときに、“学ぶ”側の人間の本性が露わになる。人間性がモロに浮き彫りにされるのである。
また、他方では、師匠と弟子の間だけでなく、弟子同士真っ裸な自分を見せ合い、文化的素養を身につけながら信頼関係を深めていく、実にすばらしい効能がある意義深い事業である。
その名士劇が、テレビ西日本開局50周年を記念して復活、この度の「福岡チャリティ歌舞伎」となったのである。
福岡にとってもたいへんよろこばしい出来事であった。
その舞台の模様を、つたない和歌に託してご報告させていただきたい。
チャリティ歌舞伎を楽しむ(H20.8.28)
夕立に 浄められたる博多座の 階段急ぐ 入場券()握りて
三色の 定式幕()の 袖の手で 幕明け告ぐる 折()の音響けり
鮮やかに 設()へられし 花舞台 満を持したる 役者揃ひて
変はり身の 所作()も声音()も あでやかな 大人()の色香に 我が目疑ふ
語るうち 詰まる科白()に客は湧()き 飛び交ふ声も 和()み満ちたり
耳慣れぬ 屋号飛び交ふ 大向かふに 見得()切る 大人()らの 姿美し
不安気な 大人()の語りと 仕草には 悪戯()盛りの 面影()偲ばゆ
|